2017ポッキーの日SS (微エロ)

 私は少しぐったりとしながら洋介さんのベッドの横に置かれた『それ』を見上げた。
 洋介さんはいつものごとく事後の汗を流すためにお風呂を入れに行ってくれてる。
 洋介さんの仕事が一段落して短い週末の逢瀬を少しでも有意義に過ごそうと私が用意した『それ』が手つかずでベッドサイドテーブルに転がってる。
 たまには積極的にと私が自分で用意したのに、洋介さんはそれを一瞥しただけで本番に突入してしまったのだ。おかげで『それ』は今も封も切られずに転がってる。
 ま、もういっか。
 気だるさにうつらうつらとしながら私が布団の中で洋介さんを待ってると。

「彩音、ちょっとこっち向いて」

 うたた寝から浮上してきた私の耳に洋介さんのちょっと熱を帯びた声が降ってきた。ふわりとかけてた布団が外されてブルリと震えて見上げようとするとそのままアイ・マスクをかけられてしまう。
 ‎
「取っちゃだめだよ。君が持ってきてくれた『おもちゃ』を楽しむんだからね」
「洋介さん?」

 何を言われてるのか分からない。
 戸惑って手を伸ばすと洋介さんの大きな手が私の手を取って起こしあげ、ベッドの端に座らせて自分の肩に掴まらせてくれる。
 すぐに横でカランカランと氷がグラスとぶつかる音がして──
 ‎
「ほら、口を開けて」

 周りの見えない私が操られるように唇を開くとスッと口の中に何か突っ込まれた。ついパクンと食いついてみる。
 あ、私のポッキー!
 私が大好きなウイスキーのロックに漬けたポッキーだ。
 こうするとチョコの部分が冷えてよりおいしい。
 私がポリポリ齧るのに合わせて洋介さんが中に押し込んでくれる。

「ほらもっと口開けて」

 言われて口を開いて待ってるのに今度は中々食べさせてくれない。
 その代わりに開いた私の唇をスルスルと濡れたポッキーが何度もこすり上げる。
 見えない中で唇を擽られて頭がぼーっとしてきて。
 ‎
「ああ、君の唇の熱で溶けてきたな」

 そういうと洋介さんはそのポッキーを私の口の中に差しこんだ。
 でもこれ、逆さだよ?
 チョコが付いてなくて残念な部分だ。
 私がそう思ってるとパックンする前に洋介さんが続けた。

「食べないでそのままちゃんと咥えてて」

 言われるまま私が咥えてると洋介さんの気配がして私の咥えてるポッキーのどこかがポキンポキンと音を立てる。最後に洋介さんの唇がポッキーごと私の唇を舐めた。

「根元までチョコがついたね」
「むうううっ!」

 洋介さんだけ見えててなんかずるい!
 文句言おうとしたけどポッキーを咥えてて声にならない。
 それをくすくすと笑いながら私の耳元で洋介さんが呟く。

「このまま僕がチョコを全部舐め取るまで我慢出来たら君の勝ちだ」

 よっし、負けるもんかと一瞬思いました。
 でも洋介さんはずるかった。私の唇ばかり何度も舐め上げる。
 たまに歯でチョコをこそげ取っては舌で私の唇に塗りつけてまた舐めあげる。
 果にはウイスキーに漬けたポッキーをもっと持ち出してきてそれで私の身体を撫でまわし始めた。ウイスキーと氷でキンキンに冷えたポッキの先が素肌の上を滑って薄くウイスキーの跡を残していく。

「んーーー!」
「駄目だよ、ちゃんと僕に掴まって。ゲームはまだ続いてるんだから」

 ずるいずるい!
 悔しくて。
 私は再度私を舐めにきた洋介さんの舌を避け、咥えたポッキーの先で洋介さんの舌をすりあげるようにして突き出し、狙いを定めて洋介さんの唇の間に差し込んだ。

「!」

 そのまま肩を掴んでいた腕を洋介さんの後ろ頭に回して逃げられない様に包み込む。
 ポッキーの先を何度もゆっくりと洋介さんの口の中に出し入れを繰り返して。
 その度にポッキーを咥えた私の唇に洋介さんの唇が重なって。
 ガチンと言う音を立てて洋介さんの歯がポッキーを噛み切った。

「彩音。どうして君はそう……」

 えっ?と思う間もなく押し倒されて第2戦に突入したのは言うまでもなく。
 「洋介さんがチョコ食べちゃったから私の勝ちですよね?」という私の質問にはしつこい程のディープ・キスで洋介さんが答えてくれた。



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