大変ご無沙汰しております。執筆はしてますがこちらは相変わらず用事がなければ更新もしないほったらかしモードで大変申し訳ありません。
 さて、今回のお題はKindle出版です。こんなに放っておいたのに、今回は多分3回くらい続きそうです。(本当に書ききれるのか??)


 今年の9月、ツイッターで中七七三(@naka773さん主催の「アマチュア小説いくら稼げるかコンテスト大賞」第一回に参加させて頂き、生まれて初めてKindleで出版してきました。

この転生、やり直してもいいですか? (イーデスブックス)
こみあ








 アルファポリス様の今年の恋愛小説大賞用に書き下ろした作品ですが、今は一部を除き削除いたしました。こちら、全面改訂217ページ、12万文字弱で税抜き小売価格350円となっています(ちょっとだけ宣伝)。

 この出版、想像以上に山あり谷ありな過程となりましたので、折角ですから今後の為にもその経緯をこちらにまとめようと思います。


とっても不謹慎な参加動機


 9月6日から発売を開始されたわけですが、実はこのコンテスト期間中ほとんど宣伝しませんでした。と言うのも、いつものごとく、最初のマーケットチェックをしてみたかったんです。
 今までもアルファポリス、なろうと最初の投稿時には他でほとんど宣伝せずにやってみてます。これはその市場のピュアなマーケット力が見たいからなんです。
 今まで沢山の読者様方にそれぞれの小説投稿サイトでお世話になってまいりましたが、今回はKindleという新しい市場で無名な私の作品がそのままでどれくらいピックアップされるのか観察してみました。

 今回、Kindle出版をお願いしたのは今年のアルファポリス恋愛小説大賞で99位を頂いた『この転生、やり直してもいいですか?』という作品です。こちらを全編改訂して出品しました。
 ある意味、アルファポリス様でなにかしら賞金が頂ける底辺レベルだったこの作品が、Kindleで出版した場合どのような経緯をたどるのか非常に興味がありました。


結構ハマってしまった出版準備

 Kindleとはいえ、お金を頂く書籍化です。手抜きは出来ない!
 ということで「一冊の本として充分に読める本にしたい。あと、今回R15で行くと決めたからには高校生でも読めるお話にしたい」そんな思いで全編手を入れ改稿いたしました。

 改訂作業って結構やることが沢山あります。今回は中七七三さんを通した半個人出版ですので、大手の出版社様のような校正作業はお願い出来ません。要は、自力でお店に売ってる本と同じレベルまで作品を仕上げなければならない訳です。
 すでに書籍化のご経験のある先生方には無意味な説明になりますが、折角ですから順番を追って私が行った基本の改訂作業を、やるべき順番で書いていきましょう。

文字のひらき
『文字の開き』という作業をご存知の方は多分、何かしら出版や物書きをされてる方ではないでしょうか?
 これは一部、漢字よりひらがなで表記するほうが読みやすい言葉をひらがなに変更する作業のことを言います。
 たとえば『事』とか『様』を『こと』や『よう』に変更するわけです。
 実際にはこんな感じ。
ひらき


 どうでしょう? 不思議とひらがなのほうが読みやすいですよね。
 詳しくはこちらのブログなどが非常に丁寧に説明して下さっています。

知っておくと便利!漢字をひらがなに「ひらく」とぐっと読みやすくなる

 これはかなり前に他の方々から伺って、ネット小説を書く時点でも気をつけていたのですが、やはりまだまだやり残していました。

フリガナ、またはひらき
 また高校生が迷うような漢字をどうしても漢字のまま使いたい場所は、数ページに一度フリガナを振り、それ以外は全てひらがなに直しました。
 これはオリジナルの原稿の一部ですが、こんな感じ。
つけるつけない


 毎回つけてしまうとくどいのですが、数回に一度はつけておきたい。
 この辺りは個人差があると思いますし、お話のターゲット層に合わせて変更すべきではないかと思います。
 どの言葉を開くか、どの漢字にフリガナを付け、どの漢字には付けないか。これは別のファイルで辞書管理してます。

・英数字を漢数字に
 今回は小説らしく縦書きでの出版ですので、英数字は基本、全て漢数字に変更しました。
 例えば、『1個』という表記は半角の英数字と漢字の組み合わせ。これが縦書きになると横向きになってしまって非常に見苦しくなります。
半角


 この場合、全角数字で『1個』とするか、漢数字で『一個』とするか、『ひとつ』と書き直します。
半角全角

 これが『11個』となると、もう漢数字で『十一個』とするしか選択肢がなくなってしまうんです。
十一個
 ほらね。ですから、基本は全て漢数字に統一します。

 ただし、『180センチの身長』これだけはこだわってこのままです。
身長

 だってこのほうがなんか色っぽいでしょ?

・記号の変更
 上記に似ていますが、たとえば『!』とか『?』も縦書きにする場合にはすべて全角に変更します。
曲者なのが『!?』。縦書きにこれを二つ並べるか、それとも半角を一文字と表記する『!?』を使うかは、今回見て回った限り出版社や本によって違うようでした。私は全て後者に統一しています。

・不必要な改行の削除と文字下げ
 Web小説と縦書き電子書籍の大きな違いは、縦書きというだけではなく一ページの構成です。どんな本でもいいので手元にある単行本を見てみてください。
改行文字下げ


 私はWordを使っているのでこれをすべて手作業で消したり変えたりしたのですが、エライ大変な作業でした。後から聞けば、一太郎だと一括変換出来るんだそうで・・・。次回は絶対買います。


・校正、誤字脱字のチェック
 上記を一旦終わらすと、大抵潰したはずの誤字やら脱字やらがまたぞろ出てきます。
 これを読み上げアプリにかけながら画面を読んで全て再度潰していきます。この時点ではフリガナを大量に振ってしまってるので、目でも確認しないと無理ですね。
 それと同時に、他にも文法的には正しくてもゴロの悪い文章や、表現が一般的ではない部分が読み上げアプリで聞くと確実に浮かび上がってくるのでそれらをまた訂正していきます。


 この他にも、今回は古代ローマをベースにしてますからローマ文化特有の固有名詞や文化の再確認、そして慣用句などを誤用していないかの再確認を行いました。他にも細かいところでは、1ページに相当する周辺で同じ言葉を繰り返さない努力をしてます。


・ページ装丁
 ここでやっとページのタイトル、表題ページを作成します。この前にやってしまうと、最後のページが一文字、なんてことが起きたり起きなかったり。
 本自体のタイトルテキストは、やはり1ページ目に入るのが定番のようです。
 次に目次が入るのですがそれは今はおいておいて。

 さて、ここで1ページのサイズですが。実は、Amazon Kindleで出版する場合、これはそれほど大きな意味がありません。Kindleは、epub形式(これもあとで説明します)に近い出版形式を使ってますので、端末やアプリの設定や、媒体の画面の大きさ次第でその小説を表示する文字数、行数を勝手に調整してくれます。
 これを無理やり解除することもできますが、設定しておかないと結局は非常に読みにくくなってしまいます。
 因みに現行、私は16行x44文字でWordの1ページを設定しています。ただこれもフリガナを振ると行数が代わってきますから、あまり気にしても仕方ありません。
 ただし、ここでフォーマットはあまりいじらないのが鉄則です。

 さて、章の出だしですが、最低限以下をするとそれらしくなります。
  • 章ごとの切り替えでは改ページを行う
  • 章の冒頭は一行開ける
  • 章のタイトルは3~4文字下げ、サイズを変える
  • 章のタイトルを見出しスタイルに設定する
  • 章のタイトルのあとは2行ほど開ける
 するとこんなふうになります。
タイトル


 上記の見出しスタイルですが、Wordでこれを使うとここまでの作業で作った章のタイトルを使って自動的に目次を作成することができます。この辺はWordの使い方になるのでご興味のある方は『Word』『見出し』『目次』といったキーワードで検索してみてください。

 Wordで原稿を作るのであれば、見出し以外はとにかく下手に文字やページのフォーマットを変えないことをお勧めします。
 その他、後述の私が経験したような失敗を避けるためにも、こちらのページは一読されることをお勧めします。

Amazon Kindle Direct Publishing より(ページは日本語です)
 電子書籍のフォーマットの簡易ガイド

 表紙については次回少し触れますが、別途用意する必要はありますが原稿の作成には必要ありません。最終的に、原稿ごとKindleサイトでアップロードする手順になります。

 そして一番最後のページに作者情報、著作権の宣言などを入れれば、とりあえず原稿が完成です。
 (最後のページは今回中七七三さんにお任せしました。お願いすると表紙や目次も相談に乗ってくださいます)

 
 今回、コンテストの出品にはWord形式でも大丈夫と伺っていたので、そんなこんなでやっと改訂版が出来上がり、中七七三さんに原稿をお渡ししたわけですが。出品前後から本業が残業地獄になってしまい、実際に出版された自作を確認できたのは10日近く経ってしまってからでした。
 そしてその間に、思わぬ問題が起きてたのです。


Kindle出版の罠

 さて今回は市場調査が主な目的でしたので、正直自分の作品が売れるかどうかはあまり気にしていませんでした。かなりお気楽に「売れなければまあそれでもいいか」などと軽く考え、本業に追い回されてたわけですが。
 残業地獄の合間を縫って日本のアマゾンのアカウントを作り、やっとKindleでダウンロードした拙作は……それはそれは、本当にひどい有様でした……

 この辺りはツイッターでもかなり呟いていたのでご存知の方もいらっしゃるでしょうが、フリガナの振られた文字が全て脱字しており、しかも記号の方向が全ておかしくなってました。
 これではもう、どうやっても読めません。
 高校生でも読めるように。そう思って大量にフリガナを入れてたのがここでとんでもない仇となりました。

 何が悲しいって、自分の作品をすでに買ってくださった方がいらしたことが一番のショックでした。
 こんなひどい状況の本にお金を頂いてしまった。あまりのショックにしばらく呆然としていました。

 大手の出版社を通さない、ということはこういうことなんです。

 自作をどんなに自分の手の内で完成させ、誤字脱字をなくしていても、そこからさきは実際に出版されるまでほとんど手が出せません。
 今回の件だけ言えば途中の手続きをしてくださった中七七三さんもいらっしゃいましたが、本来は自分でやるべき作業です。
 そして何より本当に問題なのは、Kindleが自社規格で書籍データを取り扱っている以上、投稿後、Kindleアプリで実際に出品されたものをダウンロードして見るまでは、一体どんな状態で出版されたのか確認できないのです。
 しかも、Kindleアプリは一度ファイルをダウンロードしてしまうと、次にAmazonが変更をアプリに通知してくれるまでその同じアカウントでは二度とアップデートバージョンをダウンロードできません。
 そう、スマホでもタブレットでも、同じアカウントを使う限り、最初に落としたものしか見れないと、いうことです。だから何度も変更をかけて試してみる、という作業が簡単には出来ないのです。
 結局私はお試し版と購入版(これらは別ファイルです)の二つを使って変更を確認し、最後はご購入下さった方に訂正をご確認頂きました。
 一度経験した間違いは繰り返さないでしょうが、さて、他はどうなのでしょうか?
 次は本当に全て問題なく出版できるのでしょうか?
 不安は尽きません。

 今回、これこそが沢山の出版経験を持つ出版者様が担い提供してくださる責任と安心感であり、自主出版との大きな差なのだと痛感させられました。


Kindleはやっぱり英語の国からやってきた

 さて、私の手を離れた原稿はどうなったのでしょうか。
 これを色々細かいことを省いて簡単に説明すると、中七七三さんがお持ちのアカウントで Kindle Direct Publishing のサイトから出版用にアップロードしてくださっていました。

 今現在、Kindleには出版準備をするための自社アプリ『Kindle Create』があります。ところがこれ、日本語には対応していません。
 PCでKindleの画面の表示状態を見るためのKindle Previewerというものもありますが、元々横書きを想定して作られているようで、縦書きのWordを入れてみても必ずしも正しくKindleで表示される状態が見れるとは限りません。事実、この時点でKindle Previewerでは私の元の原稿は縦書きで表示できませんでした。
 最終的にアップロードする Kindle Direct Publishing のサイトにはオンライン プレビューアという機能もあるのですが、これでも最初の原稿の時点で脱字が起きていません。

 そもそもなんでこのような問題が起きたのでしょうか?
 これは、Kindleが取り扱う原稿の形式の問題につながっていきます。


Kindle ー 独自の出版原稿形式

 Kindleのアプリでダウンロードされるデータは『.azw』という拡張子が付いています。これは無論Wordや一太郎の形式とも異なります。『Kindle eBook Format file』と呼ばれるこれは、どうやら完全にKindle独自の原稿形式のようです。
 これに一番近い状態で最初から表示できるとされてるのがepub形式です。epub形式は最近世界基準になりつつある電子書籍のフォーマットですが、こちらもつい最近まで公式に縦書きのフリガナをサポートしていなかったようです。

 これらのファイル形式を色々調べた結果を端的に言えば「Kindleの書籍データにはウェッブサイトを構成するようなプログラムが含まれていて、それがアプリに表示する時の形式を決めている」ということです。
 ただこの形式、どちらも元々が英語の横書き表示をするために用意されたものですから、いまだに縦書きが『色々』苦手なのにも頷けます。

 理想を言えば、Kindleが日本語対応の作成アプリを作ってくれるのが一番確実ですが、今回の経験から今現在出版に向けてとれる現実的な選択は以下の二つだけです。

  1)一太郎を買って、原稿をepub形式で出力する
  2)自力でepub形式を勉強して原稿を作る

 確実性のない方法としては、私のようにWordの原稿を電子書籍のフォーマットの簡易ガイドに従って変更し、入れては試し、試しては改訂し、と何度も何度も繰り返すしかありません。
 このほかにも、色々なサイトで現在Kindle出版の手ほどきを見かけますが、今回の一件では上記の二つ以外、具体的に確実な日本の小説フォーマット(フリガナ付き縦書き)を実現する方法を私は発見できませんでした。

 さて、ここまでかなり長くなってしまったので出版準備はこのくらいにして、次回は出版経験から学んだ『その2:次回への戦略』です。

 因みにこれ以上の細かい出版の手続きは、実際にいつか自力で全てやってから出すことになると思います。




追記:もしも私と同じ思いをする方が出た時のために、私に起きた問題と修正方法、それと大変お世話になった非常に役に立つ関連サイトをいくつかご紹介しておきます。

罫線がすべて横向きになってしまう問題:
罫線はword状で2500と書いて、それを選択した状態でAlt+kして出てくるものを使う。ワードで縦書きの中に横文字表示になったままにしておいてOK。

フリガナの付いた文字がすべて脱字した問題:
ワードの書式を一旦すべて消し([ホーム]タブ、[フォント]グループの[書式のクリア])、再度一部最低限必要な部分だけ入れなおす(本のタイトルとか章題のみ)。


関連サイト
とってもおすすめ:Kindle 出版の基本
『Kindleダイレクトパブリッシングで電子書籍を出版するときの注意点まとめ』
https://blog.sixapart.jp/2013-05/KDP-troubles.html

Kindle側のepub規則、禁則他
『Amazon Kindle パブリッシングガイド(Appendix)日本語サポート』
https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/G/01/00/00/61/51/63/13/6151631390.pdf

epubを使って出版する場合:
Textからのepubファイル作成方法
『期待の電子書籍フォーマット『EPUB3.0』で電子書籍を作ってみよう』
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/049/49724/

同じくepub version 3 編集(自己責任でお願いします):
『EPUB3::かんたん電子書籍作成』
http://books.doncha.net/epub/

epub version 3 編集のコツ:
『縦書き電子書籍で最低限のスタイルシート』
http://t2aki.doncha.net/?id=1380773358

電子出版時の注意:
『Kindleダイレクトパブリッシングで電子書籍を出版するときの注意点まとめ』
https://blog.sixapart.jp/2013-05/KDP-troubles.html


それでも間違ってしまった時に:
『改訂版の電子書籍のコンテンツを読者に送信する』(アマゾンー改訂の連絡先)

https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/G200966010