今日ツイッターで流した呟きのまとめです。折角なのでちょっとまとめてみました。

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 アメリカからイギリスに引っ越して直ぐの頃。
 バスの中で高校生がたむろって大声で騒いでた。
 次の停車場が近づいて一人の男性が立ち上がり叫びだした。

「なんでこんなに人がいるのに誰も彼女たちを注意しないんだ! この国は『羊』の国か? ここはいつから『羊』の国になったんだ!」

 彼は叫ぶだけ叫んでバスを降りた。顔を真っ赤にして。
 彼自身きっと注意したかったのだろう。
 でも彼もまた注意する勇気のない『羊』の一人で、あれは彼を含めた皆への叫びだったのだろう。

 高校生達はほんの少し茶化したけど静かになった。
 他の乗客も笑う人は居なかった。
 多分皆心の何処かにあの叫びが刺さってた。

 私の親の世代にはまだ子供を叱る怖い大人が結構いた。
 多分彼はそうやって叱れる大人を見てきたのだろう。
 そしてそうなれない自分やそうしてくれない老人に苛立ったのだろう。

 思うにこれは時代の流れだ。
 叱る事の出来る人はめっきり減った。
 イギリスでも主流は「叱らない」。
 親でも人前で子供を叱る事を憚り、教師でさえ訴えられるのを恐れて教育の現場で強く叱ってはいけないとされている。

 だけど。
 私を含めあのバスに乗っていた人はあの日何かを無視できなくなったと思う。
 あの時バスに乗っていた学生達は幸運だ。
 きっと反感を持ち、恥辱を感じ、そしていつか思い出して理解するだろう。

 彼は声を上げた。私には出来なかった。

 単に歳を取るのではなく『大人』になって憧れるような怖いオバチャンになるのは中々難しい。